ヨット信天翁(あほうどり)物語

  • ヨット設計者・横山晃

ヨット信天翁(あほうどり)24(現行モデルZen24)の開発は、ヨット設計家、故横山晃の一言から始まりました。

「青木さん、この新設計の原タイプとなったヨットは、もうすでに2隻が世界一周をしているのですよ。」

「このヨットは、旅に出るためのヨットです。たとえその旅が1日であったとしても、走らねばならないのは、危険が待ち受ける海の上です。」

  • 来たらざるを恃むべからず

「危険には遭遇しないように楽しめばよい。しかしそれは願望から生じる期待に過ぎません。期待通りには進まないのが、ワイルドな海の現状です。そしてワイルドさにこそ、陸上では味わうことができない楽しみがあるのではないでしょうか。ワイルドな夜間航海、嵐、高波、未知の港への出入港、アクシデントの発生、そのような状況下で、危険と戦うことができるヨットとは、どのようなヨットでしょうか。」

「重いヨットでは、戦う前に行動の自由を奪われます。重い飛行機、重い自動車が頑丈で良いと考える人は、もういないでしょう。しかし重いヨットが強いヨットという神話は、まだ生き残っています。」

「40ノットを超える嵐の中、スキッパーは独りで戦わねばなりません。ティラーにしがみついて、ステアリングしている余裕は、ないのです。」
「リーフラインやハリヤードをコクピットへリードすれば、手が伸ばせるので大丈夫というのは、希望的な考えです。」「ティラーから手が離せない性格のヨットだから、コクピットへリードしようと考えるのです。」

  • 保針性能とシングルハンド

「リーフするためにはティラーを放して、デッキ作業を行います。そして疲れた体を回復させるには、キャビンへ入って、温かな飲み物を用意しなければなりません。」「そのような時オートパイロットでは能力の限界を超えるので、もう舵をコントロールできないのです。」
「ティラーを固定しておけば、ヨット自身が直進する。」「そして波を乗り越えるスピードを保持する、その類まれな性能が、シングルハンドには必要なのです。」

それはヨット乗りとしての横山晃が残した、宝物です。ヨットに乗る技術は、誰でも上達可能です。しかし長年ヨットに乗っているから、セーリング技術が向上するのではない。長時間、単独で、軽油やガソリンに頼らずに練習するからこそ、技術は向上する。上達すればテルテイルや、ウィンデックスは不要となる。500時間を越えた頃、あなたは実感するに違いない。

「海で生き残る条件」、長時間練習の意義を示した冒頭に、横山晃は明記しています。

  • 身に危険を感じること。
  • セールという巨大な触角で、大気の流れを触感として感じ続けること。

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