3.『白隠禅師坐禅和讃』
■ 『白隠禅師坐禅和讃』 経文 現代語解釈 『智光院』
六趣輪廻の因縁は己が愚痴の闇路なり
闇路に闇路を踏そえていつか生死を離るべき
(ろくしゅりんねの いんねんは おのれが ぐちの やみじなり
やみじに やみじを ふみそえて いつか しょうじを はなるべき)
人間は、地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上、という6つの世界(六趣または六道)を生まれ変わる、とされ、それは「輪廻転生」と言われています。
悪行の結果として、地獄・餓鬼・畜生の3つの悪趣に生まれ、善行の結果として、修羅・人間・天上の3つの善趣に生まれる、とされています。
そして、苦しみからの解脱は、3つの善趣に転生すること、と考えています。
しかし、そのような考えは、私たちが愚かで、仏心を信じないがために、そう考えるのです。
もともと釈尊の教えでは、私たちの苦しみには、必ず原因があり、その原因を無くせば苦しみは消滅する、という考え方です。
その教えを知らないから、私たちは輪廻転生に、救いを求めているのです。
それは、暗い夜道を、灯りも点けずに歩いていくようなものです。
暗い夜道を歩いていっても、目的地に辿り着くのは難しく、これでは、苦しみから抜け出すどころか、さらに苦しみの迷路に入り込んでしまいます。
- 天界道
天界道は天人が住まう世界である。天人は人間よりも優れた存在とされ、寿命は非常に長く、また苦しみも人間道に比べてほとんどないとされる。また、空を飛ぶことができ享楽のうちに生涯を過ごすといわれる。しかしながら煩悩から解き放たれていない。
天人が死を迎えるときは五つの変化が現れる。これを五衰(天人五衰)と称し、体が垢に塗れて悪臭を放ち、脇から汗が出て自分の居場所を好まなくなり、頭の上の花が萎む。 - 人間道
人間道は人間が住む世界である。四苦八苦に悩まされる苦しみの大きい世界であるが、 苦しみが続くばかりではなく楽しみもあるとされる。また、仏になりうるという救いもある。 - 修羅道
修羅道は阿修羅の住まう世界である。修羅は終始戦い、争うとされる。苦しみや怒りが絶えないが 地獄のような場所ではなく、苦しみは自らに帰結するところが大きい世界である。 - 畜生道
畜生道は牛馬など畜生の世界である。ほとんど本能ばかりで生きており、使役されなされるがままという点からは自力で仏の教えを得ることの出来ない状態で救いの少ない世界とされる。 - 餓鬼道
餓鬼道は餓鬼の世界である。餓鬼は腹が膨れた姿の鬼で、食べ物を口に入れようとすると 火となってしまい餓えと渇きに悩まされる。他人を慮らなかったために餓鬼になった例がある。
旧暦7月15日の施餓鬼会はこの餓鬼を救うために行われる。 - 地獄道
地獄道は罪を償わせるための世界である。その罪の重さによって服役すべき場所が決まっており、焦熱地獄、極寒地獄、賽の河原、阿鼻地獄、叫喚地獄などがあるという。そして服役期間を終えた
ものは輪廻転生によって、再びこの世界に生まれ変わるとされる。
慈眼院 座禅会 井内 道登