世界一周目指したヨットの男性を救助を読んで

大型台風14号の余波が残る中を、巡視船は危険を冒して見事に救助を成功させた。海上保安庁の功績は大きい。領海問題を抱える中であっても、相手国の人の遭難に対して公平に対応する姿勢は、世界にアピールすべきである。劉俊成さんが無事に救助されてよかった。素直な感想だ。

しかしこの記事をよく読んでみると、劉俊成さんの航跡には疑問が生じる。

  1. 和歌山県から出港したのが22日であるなら、遭難海域までは最大で270海里となる。もっとも遠距離となる和歌山港から、遭難海域の八丈島南方までの距離だ。34フィートのヨットならば、平均して6ノットの航海計画を立てる。すると八丈島南方への所要時間は約45時間となる。到達予定時刻は、遅くとも24日中と考えられる。2日で到達できるところを7日間かかっている。
    しかも台風14号の接近までは北風をアビーム(横風)に受けて、6ノット以上で快走できた状況である。29日まで走航が可能であったとすると、7日間の平均速力は1.6ノットだ。そのあまりの遅さは、いったいなぜだろうか。
  2. 26日には大型台風14号の進路予想が、示されていた。28日には大阪湾のマリーナでも、接近が避けられないと見て、台風対策を開始している。台風の進路予想はラジオでも放送されている。衛星電話でも、気象情報を入手することができる。
    もし台風の接近がつかめていたなら、三重県もしくは和歌山県の港へ、避航して台風を避けることができた。危険な台風の前面を続航したのはなぜだろうか、わからない。
  3. 事故を知って、思い出したことがある。劉俊成さんには世界一周の相談を受けたことがある。そのときにアドバイスをしてみた。帆走中にライフジャケットを着用せずにいたのを見たからだ。
    「ヨットからはいつ落水するかわからないので、ライフジャケットを着けたらどうですか」
    「ライフジャケットは、肩がこります」
    「肩こりと命とどっちが、大切と思いますか」
    「死ぬのは、怖くないです」
    「エー、そうですか」
    「死を恐れてはだめだと、毛沢東の教えから学びました」
    「・・・・・・」
    アドバイスはあきらめた。
  4. 私のところへ、長距離航海の相談に来る人がいる。そのときにはまず、聞くことにしている。どんな危険があるのか、その結果は予測しているのか。そして自分自身が、一人で責任を負う勇気があるのかを 聞く。シーマンシップは、精神ではない。シーマンシップは、セーリング、気象、ナビゲーション、メンテナンスの4種類の総合技術で成り立つ。
    劉俊成さんはシーマンシップの習得に、どれほど努めたのか、大いに疑問が残る。

「世界一周目指したヨットの男性を救助 台風で航行不能に」

ASAHI.com 2010年10月31日21時12分

 東京・八丈島の南約150キロの海上で、大阪市東住吉区の中国籍、劉俊成さん(55)の乗るヨット「好友」(5.3トン)が航行不能となり、31日午前9時ごろ、横浜海上保安部の巡視船に救助された。劉さんにけがはなく、元気という。

 横浜海上保安部によると、劉さんからは30日午前10時半ごろ、台風14号による荒天で帆を操作するロープが切れるなどして動けなくなり、衛星電話で友人に連絡した。友人からの通報を受けて同保安部の巡視船が向かったが、天候が悪く現場海域への到着に時間がかかった。ヨットは22日に和歌山県から出港し、世界一周を目指していたという。

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