航海者から見たアジア内海の歴史と文化
1-1 大陸側から見た日本列島弧の位置
島嶼問題を巡り、国家間の関係がぎくしゃくしている。日本列島弧の側から見れば、国境の境界に関わる問題と受け止めて、領土領海の拡大縮小に結びつけて、感情的な反応に覆われているようだ。さらに海底に眠るといわれている資源が、問題を複雑にしている。
日本列島は地図上では、アジアの辺境に位置しているように見える。ほとんどの地図は、北が上方に設定されているので、日本はアジア大陸の端っこに描かれている。東側は広大な太平洋が広がるので、その地図を見慣れた目には、どうしても辺境意識が蓄積されていく。
しかしその地図を回転させ、大陸側から日本列島弧を見れば、どのように映るだろうか。列島は単なる辺境から一転し、大陸から太平洋への出入り口を塞ぐ、長大な関門となる。太平洋へ出る島嶼間の関門を、容易に閉鎖される状況では、大陸側の艦隊指揮官はたまらないだろう。すると北方4島、竹島、尖閣諸島、パラセル諸島、スプラトリー諸島などの領有権問題が、境界や資源だけでなく、さらに重要な意味を持ってくる。辺境の日本列島弧が、大陸に対して優位な地理上の位置を占めるのだ。
日本では地政学(Geopolitics)が重要視されていないようだが、地理的な環境が国に与える政治的、軍事的、経済的な影響を、多角的な視点で研究する必要があるのではないだろうか。